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「んっ……」
やんわり抱き上げてベッドへ移動させようと伸ばした指先が、滑らかな二の腕に触れた途端、日織が小さく身じろいで、薄らと瞳を開いた。
「しゅ、たろぉさん……?」
寝ぼけているのだろう。
ぼんやりと潤んだ瞳で修太郎を見上げる日織の視線は、どこまでも茫洋として捉えどころがない。
カーテン越しに差し込む茜色の陽光を映してキラキラと黒瞳が揺らめいてはいるけれど、どこか焦点が定まっていないことでそれが分かる。
「日織?」
もう1度日織の顔を覗き込んで、「眠いならベッドに行きしょう?」と声を掛ける。
と、ようやくその目に修太郎の姿を認めたらしい日織が、それでも依然ぽやんとした様相のまま、修太郎に向かって両手を差し伸べてきた。
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