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と、ちょうどそのタイミングで、程よく酔いが回ってきた林さんが、「俺、生のお代わり頼みますけど皆さんどうしますか?」とおっしゃった。
「じゃあ、僕も同じものを」
「俺も」
私以外のニ名が口々にそれに答える。
私はそんな皆さんを横目に、ウーロン茶のグラスを持ったまま動きを停止したままだった。
そんな私の様子に目を留めた林さんが、
「あれ? 藤原さん、それまだ一杯目のウーロン茶じゃないっすか? っていうか、空っぽだし。――そうだ! せっかくですし、次はお酒いきませんか?」
言って、私の手からグラスを取り上げてしまう。
「す、すみません。私、お酒は飲んだことがないのです……。なので」
未だぼんやりとした頭のまま、それでも何とかそれだけは伝える。
職場の皆様との宴席で、初めての飲酒を経験して、もしも乱れてしまったら大変だ。
塚田さんにだけはそんな醜態、さらしたくない。
そう思ってやんわり辞退すると、林さんの隣に陣取っていた森重さんが、「何かあっても係長が責任を持って介抱てくれますって。だから飲みましょうよー」と林さんの援護についてしまう。
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