6.歓迎会

10/10
前へ
/481ページ
次へ
 途端、林さんが笑顔になって、私の前に置かれたメニューをパラリとめくって、サワーと書かれたページを開いてくださった。 「この辺ならジュースみたいに甘くて飲みやすいって女性たちにも評判っすよ」  見ると、色鮮やかな飲み物の写真がたくさん載ったページで。  アップルサワー、ピーチサワー、マンゴーサワー、ピンクグレープフルーツサワー、カルピスサワー……等々。  私は大好きな(ピーチ)の文字に()かれて、「じゃあ、ピーチサワーを飲んでみようと思うのですっ」と言っていた。 「……無理、していませんか?」  隣から、塚田(つかだ)さんの心配そうな声が掛かったけれど、私はドキドキを誤魔化すようにメニューから視線を外さないまま、わざとらしいくらい元気に答える。 「だ、大丈夫なのです! 私、よく考えてみたら薬膳酒(やくぜんしゅ)なら子供の頃から結構飲んだことがありますし、お酒の経験値、全くのゼロじゃなかったのです! 今日は、ほんの少しだけレベルアップをはかってみたいと思います!」 (最初はちょっぴり口に含んでみるだけ。危ないって思ったら、すぐに飲むのやめるのです)  そう、思いながら。
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2869人が本棚に入れています
本棚に追加