2869人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「ん……」
無意識に寝返りを打ったところで、「トイレ……」とつぶやいて、私は自分のその声に目を覚ました。
塚田さんに寄り掛かって目を閉じていたときには、とてもじゃないけれどドキドキして眠れないと思っていた。それなのに、私は結局いつの間にか意識を手放してしまったみたい。
ほんのりと薄暗い部屋の中で、私は見知らぬベッドに寝かされていた。身体には柔らかな布団もかけられていて。
寝具全体から香る大好きな塚田さんと似た香りに、私は彼に包まれているような錯覚を覚えて眠りこんでいたらしい。
でも、いま視線を巡らせて見ても、傍に塚田さんの姿はなくて。
それに気付いたと同時に急に不安になった私は、慌てて身体を起こした。途端、くらくらとした眩暈に襲われて、思わずベッドに手をついて身体を支える。
「……塚田、しゃん?」
恐る恐るつぶやいてみたけれど、部屋の中には私以外の気配はないみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!