2869人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あにょっ、わ、私には……っ」
思わず背後を振り向いてそこまで言って、私は塚田さんの笑顔に、ずる賢くも思わず言葉を飲み込んでしまう。
(私は……人として取り返しのつかない事をしようとしているのですっ)
***
しばらく私の言葉の続きを待ってくださった塚田さんだったけれど、私が先を言えずに躊躇っているのを知ると、ややして話し始められた。
「僕はね、歓迎会が始まってからずっと、心の片隅で貴女がこんな風に酔っ払ってくれたらいいと願っていました。だから……林くんたちが貴女に酒を勧めたときも、キミが困っているのを知りながら、なかなか止めに入らなかったんだ。ずるい男でしょう? ――なので」
そこで一旦言葉を区切ると、塚田さんが私を抱く腕にほんの少し力を込める。
最初のコメントを投稿しよう!