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「僕に関して言うならば、キミが引け目に感じることなんてひとつもないんです」
僕に関して言うならば、というところに……私は塚田さんが自分以外の誰かを想定しているのを感じた。
多分それは――。
(……健二さんのことだ……)
告げられた塚田さんの言葉の重みに、私は思わず立ち止まる。
そんな私に合わせて歩みを止めると、塚田さんは私の頭を優しく撫でてくださった。それから、何の声かけもなくいきなり私をお姫様抱っこなさる。
「きゃっ」
突然のことに驚いて、私は思わず彼の首筋にしがみ付いた。
(わわわ、どうしましょうっ。塚田さんのお顔が、ものすごく近いのですっ)
それはもやもやとわだかまる許婚への罪悪感を束の間吹き飛ばしてしまうほどの衝撃で、私は不覚にも健二さんのことを失念して、またしても塚田さんへの想いにソワソワと溺れてしまう。
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