7.告白

18/18
前へ
/481ページ
次へ
 そこで私をそっと(した)に下ろしてから、 「一人で、行けそうですか?」  さすがに個室までついていくのはどうかと思うので……と笑う。そんな塚田(つかだ)さんに、私は真っ赤になってうつむいた。 「僕はリビングにいますので、転ばないように気をつけて。――何かあったらすぐに呼んでくださいね」  言って(きびす)を返されたのを、私は半ば呆然(ぼうぜん)と見送る。  塚田さんがリビングの扉を閉めるのを確認してから、私は壁にすがるようにしながら前進して、どうにかこうにか個室に入った。  そうしながら、さっき塚田さんに「私には許婚(いいなずけ)がいるんです」とちゃんと言えなかった自分のズルさに落ち込んでしまう。  許婚の存在なんて、塚田さんは父たちから聞いてとっくにご存知なんだろうな、と思いつつも、自分の口からは……健二(けんじ)さんのことを話したくない、と思ってしまった。
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2870人が本棚に入れています
本棚に追加