8.キスのレッスン*

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 それは、ずっと許婚(いいなずけ)だと言われ続けてきた健二(けんじ)さんにすら抱いたことのない感情で――。  いま目の前にいらっしゃる、彼以外の男性とお付き合いすることは考えられない、とはっきり自覚した。 (私、健二さんや彼のご両親、そしてお父様やお母様と、一度ちゃんと向き合わなくてはいけないのです)  そこまで考えて、ふと中本さんが前に仰っていらした、『彼、親が決めた女性(ひと)がいるとかで、誰にもなびかないから』という言葉を思い出す。 (そういえば……自分のことに手一杯ですっかり失念していたけれど、修太郎(しゅうたろう)さんにも決められたお相手の方がいらしたんじゃ?)  そう気がついたら、その事が気になってたまらなくなってしまう。でも、意気地(いくじ)なしの私は、それを直接問いただすことが出来なくて……。 「()……、しゅ、修太郎(しゅ、たろぉ)さん……。わ、私、その……同年代(どうねんらい)の女の子らちが普通に出来て当らり前のこと、(ほとん)ろ何も知りません。それれも……そんな私が……貴方の隣にいれも……構い……ませ、んか?」
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