9.キスのその先*

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「しゅ、修太郎(しゅ、たろお)さん、そこ、駄目(らめ)っ、れすっ、くすぐったいの、ですっ……」  修太郎さんと恋人つなぎをしていない方の右手で、彼の胸元を押し戻すように抵抗を(こころ)みるけれど、体に力が入らなくて全然ダメで。 「日織さん、そう言う時はね、ダメ、じゃなくてもっとして?……って言うんです。二人きりの時くらい、素直な貴女を……僕に見せて……?」  修太郎さんが敏感になった耳へ、切ない吐息まじりの声を吹き込んでいらした。  その熱い吐息に、私は思わず首をすくめてしまう。  そんなこと急に言われても……はい、そうですね……というわけにはいかなくて。  私は涙目で修太郎さんを見上げる。  その視線で、私の無理です、という気持ちが伝わったのか、私の視線を受け止めた修太郎さんが、ふっと表情を緩めて小さく息を()かれた。
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