9.キスのその先*

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「本当は……」  一旦まぶたを閉じて思案なさるような素振りを見せられたあと、私の頬を優しく撫でながら、どこか苦しそうに修太郎(しゅうたろう)さんが声を(つむ)がれる。 「本当は……このままキミを僕のものにしてしまいたいところなんですが……それではきっと、日織(ひおり)さんを困らせてしまいますね」  貴女の性格を思うと、それはあまりにも酷だ、と小さくつぶやいてから、修太郎さんは切なげな呼気を(ともな)って、私の身体から離れられた。 「……修、太郎、さん?」 (彼の求めに応じ切れなかったから呆れられてしまったの?)  突然私の上から身体を起こしてしまわれた修太郎さんを見て、突き放されたように感じてしまった私は、途端、胸が苦しくなる。
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