9.キスのその先*

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 それでも心の片隅で、健二(けんじ)さんとのことに何の解決も出さないままに修太朗(しゅうたろう)さんと最後まで進まなくてよかった、と思う自分がいたのも確かで。 「日織(ひおり)さん。今、貴女はきっと、許婚(いいなずけ)のことを考えておられるでしょう?」  私をベッドから抱き起こしながら、修太郎さんが話のついでのようにそう切り出していらした。その言葉の内容に、私は思わず身体を固くした。 「……え?」  修太郎さんの言葉が信じられなくて、反射的に彼のお顔を見ると、 「……神崎(かんざき)健二(けんじ)」  修太郎さんは、私を真っ直ぐに見据えて健二さんのフルネームを告げられた。 「……何故……修太郎さんが健二さんのお名前を?」  余りに驚いて、言下(げんか)にそう問いかけると、刹那(せつな)修太郎さんは少し困ったようなお顔をなさってから、 「少なからぬご縁があって、僕は彼のことを存じ上げています。日織さんのことも……実は健二から頼まれていました」  とおっしゃった。
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