2870人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも心の片隅で、健二さんとのことに何の解決も出さないままに修太朗さんと最後まで進まなくてよかった、と思う自分がいたのも確かで。
「日織さん。今、貴女はきっと、許婚のことを考えておられるでしょう?」
私をベッドから抱き起こしながら、修太郎さんが話のついでのようにそう切り出していらした。その言葉の内容に、私は思わず身体を固くした。
「……え?」
修太郎さんの言葉が信じられなくて、反射的に彼のお顔を見ると、
「……神崎健二」
修太郎さんは、私を真っ直ぐに見据えて健二さんのフルネームを告げられた。
「……何故……修太郎さんが健二さんのお名前を?」
余りに驚いて、言下にそう問いかけると、刹那修太郎さんは少し困ったようなお顔をなさってから、
「少なからぬご縁があって、僕は彼のことを存じ上げています。日織さんのことも……実は健二から頼まれていました」
とおっしゃった。
最初のコメントを投稿しよう!