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「日織さんは健二の父親の職業をご存知ですか?」
ベッドに座り、縮こまってうつむく私の前にしゃがみ込むと、修太郎さんは小刻みに震える私の両手をそっと包み込んでいらした。
修太郎さんの温かくて大きな手の感触に、私は少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
「政界の……方だとうかがっています……」
私を優しく見つめてくださる修太郎さんに恐る恐る視線を合わせると、そう答える。
そして、健二さんはそんなお父様を支えるお仕事をなさっておられるのだと、父から聞かされたことがある。
いずれは健二くんも父君にならって、政界に打って出ることになるだろう、とも。
だからそんな健二さんの奥さんになる日織には、夫を支えられる内助の功が求められているのよ、と母から言われて、そんな大役が自分なんかに務まるのかしら?と思ったのだ。
だから、今のままの自分では嫁として受け入れられないと先方さまが仰っておられるとうかがったとき、妙に納得したりもして。
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