俗物嫌い

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 けれども、僕は二十五歳の時、御祖母さんが病気で入院して個室に独りという状態になったので高校生になって以来、後にも先にも、この時だけ母と一緒に御見舞いという形で会いに行ける事になり、御会いしたら、「うわー!けいちゃんが来てくれた!けいちゃんが来てくれた!会いたかったよー!」と御祖母さんが相好を崩して大層、御喜びになられたので僕は大感激して手厚く御伺い御見舞い申し上げて鞠躬如として侍坐する如く病床の横の椅子に座り、御祖母さんの御話を少し御聞きした後、御別れする時も何度も深々と御辞儀をして精一杯、幼少から少年期に可愛がって下さった事に対する感謝の意を御見せしたら御祖母さんも僕の満腔の誠意を尽くした謝礼に大感激されて頗る御喜びになられ其の様子を見ていた母も頗る喜んだので僕は心底、満足する事が出来た。
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