0. プロローグ

2/2
569人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
 そんな妹が、最近スマホのゲームにハマり始めた。いわゆる乙女ゲームというやつだそうだ。「私のシンデレラストーリー あなたはどの王子様が好き?」というザ・ありきたりなタイトルで、複数いる攻略対象から一人を選び、時間さえ待てば無課金でプレイできて、ゲーム内のアイテムを買わなくても選択肢を間違えなければちゃんとハッピーエンドを迎えられるという、なんとも良心的なゲームらしい。  妹曰く、攻略対象はたくさんいて、王道だけどストーリーも面白いから結構楽しめるんだとか。  現在、親のすねかじり状態であることに罪悪感のある妹にとって、お金をかけなくてもそこそこ遊べるゲーム、しかも現実逃避できるとなれば、ハマるのも無理のないことだったのかもしれない。結構どころががっつり楽しんでいるようにしか見えない。  私はさすがにゲームをする時間までは取れないので、自分でプレイしたことはなかった。そして、音楽しか支えの無かった妹にほかに興味が持てるものが一つでもできたのだ、とそのことにすっかり満足していた。だから、プレイした妹が毎日私の帰宅後に、ゲームのストーリーや感想を興奮しながらまくしたてるのを聴いて相槌をうち、音楽の時と一緒で話し相手になるだけで十分だと思っていた。  こんなことになるのも知らずに。  あの日、仕事帰りに酒気帯び運転の車に撥ねられて私は死んだ。  そして私は生まれ変わった。  妹がハマったゲームの悪役令嬢モブその1として。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!