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こんな時なのに、こんな時だからこそ、己の思いをもっと知って欲しいと思ってしまった。特別に美柚が好きだから、大事なんだと、レンはもう己の気持ちを認めている。
「美柚、何も考えるなとは言わないよ。でも、そんな全部差し出さなければここにいてはいけないみたいなのは嫌だ」
レンがそうはっきりと告げると、美柚は驚いたように顔を上げた。
──何、その反応っ!?
大きな瞳がまん丸になった。まさか考えを読まれているなんて、とばかりの反応に、レンはようやく本心からの笑みが漏れた。
「ほんと、美柚ってなんなんだろうね……」
ぐっと込み上げて痛くなるほどの切ない気持ちをふとした瞬間持て余し、今も心配で仕方がないのに、彼女が彼女らしくあるところを見るだけで、それらが緩和される。
ぶつけたいと思う衝動が見当たらなくなって、どこかほんわかした気持ちになる。
恋愛ごとに鈍すぎるのももどかしいとは思うけれど、普通に生きていたはずの少女にとって突拍子もないことが続き、それらにひたむきに向き合っている美柚を見ていると、そのままでいて欲しいとも思う。
「なにって……」
「美柚がいることは楽しいよっていう話」
「……そんなニュアンスだったかな?」
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