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一面に広がるブルースカイ。
そこに羽を広げた鳥の形をした白い旗が八方に繋げられ、気持ち良さそうに揺れている。
リーン、ゴーン。リーン、ゴーン。
と鳴り響く鐘の音は門出の者を祝っているようだ。
「汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも……」
なんちゃらかんちゃらとお決まりの口上を上の空で聞いていた吉永美柚は、現実味のない中そこに立っていた。
「誓いますか?」
その言葉は誰に向かって言っているのだろう、とばかりに遠くに聞こえる。
人生に一度なら、と憧れるような場所とシチュエーション。
大通りに面した街中にある教会は、昼夜とも存在感を示し何百年とあるこの地の歴史の象徴だ。
天空に向かって聳える塔。どっしりとした分厚い壁、彫刻の繊細さと荘厳さ、精密な装飾の数々。
当時の技術を駆使した芸術家たちの傑作に囲まれる。
なかでも、大きなステンドグラスが外の光を通し室内を照らし幻想的だ。
その時その時にしか見ることのできない自然光の美しさに、息を飲み見惚れる者も多いだろう。
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