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アーチ型の天井に向かって白く太い豪華な柱が何十本と聳え、参拝者のためのベンチが並べ置かれている。
そこには一人の男性が座っているのみ。あとは、パイプオルガン奏者と牧師。
そして、メインとなる白のドレスに身を包んだ少女と、その前に立つタキシード姿の青年。
「誓いますか?」
「…………」
美柚が黙っていると、もう一度、さあ、誓いなさいとばかりにじっと見られる。
ふくよかな顎のまわりの贅肉が詰襟の上にのって窮屈そうだ。苦しくないのかな、そんなことを思いながらもにゅっとした肉を見つめた。
ぼんやりというわけではないが、頭が働いてくれない現状に口を開けないでいると、牧師の灰色の瞳が急かすようにすっと細められる。
えっと、何だっけ? たしか、健やかなるときもと言っていたが、
…………誓うわけ、ないじゃない。
相手が嫌だとかそういう話ではない。それ以前の問題だ。
現状が理解できない。全くもって意味がわからない。
真っ白なウエディングドレスを着せられ、どうして自分が神の前で誓いを立てなければならないのか。
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