When you are healthy

3/9
前へ
/530ページ
次へ
 アーチ型の天井に向かって白く太い豪華な柱が何十本と(そび)え、参拝者のためのベンチが並べ置かれている。  そこには一人の男性が座っているのみ。あとは、パイプオルガン奏者と牧師。 そして、メインとなる白のドレスに身を包んだ少女と、その前に立つタキシード姿の青年。 「誓いますか?」 「…………」  美柚が黙っていると、もう一度、さあ、誓いなさいとばかりにじっと見られる。 ふくよかな(あご)のまわりの贅肉(ぜいにく)詰襟(つめえり)の上にのって窮屈そうだ。苦しくないのかな、そんなことを思いながらもにゅっとした肉を見つめた。  ぼんやりというわけではないが、頭が働いてくれない現状に口を開けないでいると、牧師の灰色の瞳が()かすようにすっと細められる。  えっと、何だっけ? たしか、健やかなるときもと言っていたが、  …………誓うわけ、ないじゃない。  相手が嫌だとかそういう話ではない。それ以前の問題だ。  現状が理解できない。全くもって意味がわからない。 真っ白なウエディングドレスを着せられ、どうして自分が神の前で誓いを立てなければならないのか。
/530ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加