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──なぜ、こんなことになっているのだろうか……?
優しく笑っている見知った相手が、何を考えているのかわからない。穏やかにいつも見守ってくれていたはずの人が、今は知らない人に見える。
美柚は疑問ばかり浮かばせ、他人事のようにどうしてだろうと目の前の青年を眺めた。
知っているようで知らない表情で、困ったように微笑むが何もいうつもりはないらしい。
じっと美柚が『誓う』という言葉を告げるのを待っている。
そこには愛などと甘いものなど絡んでいなくて、どこかぎすぎすした緊張感漂う切羽詰まった空気を感じさせる。
疑心暗鬼になるには十分な状況と気配に、ますます美柚の口は重くなる。
何かが、違う。
──変わってしまった?
そう思うことが、ひどく悲しい。
この現状の疑問よりも、そのことの方が美柚にとって重要で行動するのも考えるのも億劫にさせた。
説明もなく、ただ誓わせようとする相手は美柚の大好きだった人ではなくなってしまったのだろうか。
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