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今も、話題に触れたらどこか辛そうに美柚は下を向く。
「美柚?」
「…………」
追い詰めたいわけではないのにと、レンはもどかしい思いに古傷が疼く。それが疼くと、場所が場所だけに嫌な予感がして落ち着かなくなる。
レンは気持ちを落ち着かせるように、ふぅっと息を吐き出した。
多少の緊張感は悪いことではない。危ないのだと意識してくれるだけで、こちらも守りやすい。
でも、『望むままに』なんて言われて、じゃあなんてすんなり頷けるわけがなかった。
そういったことは、何も望んでいない。美柚に何かして欲しくて一緒にいるわけではなくて、これからも一緒にいるために真相を確かめるために動いているのだ。
だから、レンにとって過去や体質はわり方どうでも良かったりする。理由を知れば、今までの苦しみも消化できるものだった。
なかったことにはならないけれど、美柚にも言ったようにレンにとっては今が大事であり、これからが重要だからだ。そのためには、美柚の憂いと現状の改善が必須であるだけ。
気にしてくれるのは嬉しいけれど、己の気持ちをないがしろにされたようで少し腹が立って、だったらと思わずキスをしていた。
つい、なんて言ったけれど、多少衝動的ではあったけれど、しっかり思いはあった。
気を逸らしたくて、それとともに一緒にいるうちに募る思いを少し吐き出したくて、わかって欲しくて。
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