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じっと見つめても見つめ返されるだけで、美柚は眉尻を下げ情けない表情になった。重い空気に耐えきれず、こみ上げてきそうなものを堪えるように目を閉じる。
相手が動く気配。
伸ばされた腕が美柚の顎を掴みくいっと上に持ち上げられる。どうされるのだろう、と思う間もなくピタッと相手の行動が止まった。
バタンではなく、ガタンとドアが外れそうな音とともに勢いよく開かれた扉から、新たな光と風が入り込む。
そこに現れた二人の姿を確認すると、美柚は我知らず安堵の息を吐いた。
それに気づいた目の前のタキシードの青年がぴくりと眉を上げたが、美柚は気づかず二人を見つめ続ける。
相変わらず豪快な登場だ。
どうしてここがわかったのか、と思う前に探し当ててくれることを期待ではなくほぼ確信していた。
だから、どこか他人事のように感じていたのかも知れない。
それでも不安はずっとあって、彼らの姿を見るとやはりホッとした。
同じタイミングで怒ってるぞとばかりに美柚にまで向けてくる青の双眸の鋭さを目にしながら、そんな状況ではないのに二卵性といえど双子だと感心する。
バージンロードを軽やかではなく、飛ぶように俊敏にかけてくる二人はあと数秒で自分のところにくるだろう。
風を斬るようにとの表現が似合う素早さに、さすがだな、とそんな感想を持つ余裕ができた。
思考がやっと自分らしさを取り戻し、こちらにやってくる二人を眺める。
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