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こんがらがって、どうしていいのかわからない現状に時間が欲しくて、されるがままであった。
だが、心がついていかない現状は納得できなくて、停止という選択をしていたことに正常を取り戻して気づく。
それは逃避だ。
大事に思うからこそ、今はわからなくても大事であったからこそ、それはしてはいけないことだった。
そう反省してそっと窺い見た相手は、とても冷たい眼差しで自分を見ていた。
絡み合う視線に知っている何かを探そうとしたが、何も見えない。そこには美柚の知らない表情を見せる、知らない青年がいた。
冷ややかな視線が射抜くように美柚を見る。
それにびくっと身体を強張らせ身を引こうとすると同時に、美柚の手と腰を反対側から強引に引く力強さに安心した。
「ずいぶん、勝手なことをしますね?」
「…………」
絶対零度の完璧な微笑をレンが貼り付け、何の感情も見せない相手を透明がかった薄い青の瞳で睨みつける。
それと同時に、美柚の腕を掴んだ手はもう離さないとばかりにきゅっと力を込められ、どれだけ心配をかけていたかを知る。
「ちっ」
ジンが舌打ちしながら美柚の腰を抱き、タキシードの青年から距離を取らせた。群青色の瞳は警戒するように鋭さを増し、相手を威嚇する。
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