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そんな思いとともに、今は何より一番物言いたく話を聞きたい人へと視線を向け、美柚はぞっと身体を震わせた。全身に鳥肌が立つ。
溜め息ひとつと、小さく首を振った相手は美柚の性格をよく知っている。
いざ、持ち前の勝気が発揮されようというところで、持ち直した心を粉々に砕く。
「だから『誓って』欲しかったのに」
そう冷たく告げる相手の視線と、その手に持つ“もの”。
「矩、ちゃん?」
動揺で心臓がドキドキと早鐘を打ち、まるで幽霊でも見るかのように目を見開き固まった。
向けられる冷たさは知らない……。
向けられる冷たさが信じられない……。
自分の周囲が殺気立つのを感じながら、美柚はただ言葉もなく相手を視界に映した。
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