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その頃ユキは、宿舎のバルコニーで本を読んでいた。夕暮れの空の明かりを惜しんで。今日は満月だから、夜中になれば月明かりの下で読書の続きが出来る。ユキは本が大好きな子供だった。
「あ、ユキ、帰ってたんだ!」
モモがバルコニーのユキに気付いて下から手を振ると、ユキも手を振り返し、本を閉じてモモを迎える為に部屋に戻った。どのみち日は沈み、かすかに西の空に紫とピンクの雲を残すのみだ。本は結構高価なものなので、ユキは極端に節約してチップや小遣いを全て本代にあてていた。
相部屋で同期の少女モモが部屋に帰ってきた。
「おかみさんにお小遣いもらったから、お菓子買いに行こうっ!」
はしゃぐモモを見て目を細める。本当にモモは可愛い。同じ年頃のユキにそんなことは思われたくないだろうが、可愛い。
二人は銀の花飾りの球…所属を示す身分証のようなもの…を首から下げて、手をつないで、夜の街の冒険にくりだしたのだった。
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