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ストロベリームーン・ルージュ
階段を上る。一歩一歩、上るたびにポケットから落ちていったのは何だったでしょう。
落ちて散らばったその中に、今も忘れられない気持ちが沢山あった。
そして気づく。そうだ。あれは階段を上がる行動でポケットから落ちてしまっただけで、私の意志ではなかったのだと。
学校の四角く窮屈な教室。同じ形、同じ大きさ、押し込められる私たちは同じじゃないのに。冷房も埃臭くて、生ぬるい空気を吐き出していた。
あの頃不満だったものは、今、もう一度拾い集めたいものになっていた。
そんなことを、ベットに散らばった化粧道具を眺めてふと思ったのだった。
六月のストロベリームーンが浮かぶある夜の出来事。
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