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黒猫の休息
夏の暑さがやや下火になった頃、夜には虫の鳴き声も聞かれ少し涼しげな風がささやいて…。
夕御飯の後お風呂に入り、その後、テレビを見ながらビールで喉を潤す。
クーラーの効いている部屋で、夏の間繰り返されてきた風景。
慣れ親しんだ生活も季節と共に変化していく。
「お母さん、クーラーもったいないから止めてもいい?
外とっても涼しいよ。」
愛子が澄子にたずねた。
「そうねー、ついでに窓も開けておいてくれるかな?。いい季節になってきたねー。」
澄子は答えた。
「あっ!網戸もお願いね。
なんだか最近蚊が多くて…。」澄子は付け加えた。
愛子が窓を開け網戸を閉めてボーッと外を眺めていると、そーっと黒い猫が庭においてある水の入ったバケツのところへやって来た。
猫は、愛子がすぐそばで見ていることには気づいていないらしく、安心しきっている。
もしかしたら、毎日のように花の水やりのためにためているバケツの水を、喉の乾きを補うために飲みに来ていたのだろうか。
脅かさずにそっとしていると、日中の日差しにガンガン照らされていたコンクリートのテラスが冷えてきたのか、黒猫はその上にのんびりと寝そべっている。
月明かりの下で平和なひとときを送る黒猫に、少しうらやましさを感じながら、夜は更けていった。
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