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プロローグ序章Ⅱ
俺は暗闇の中に一人、立っていた。
黒ではなかった。目の前にある空間は、ただひたすらに灰色だ。でも、そこは暗く足元すらおぼつかない、不思議な所だった。
「……?」
灰色をした闇の中で、誰かが俺を呼んだような気がした。
『――』
何を言っているのか聞こえづらい。俺の名前ではないような気がするが、俺を呼んでいる気もするのだ。
『――貴方は』
耳元で聞こえたのは、機械音声のような声だった。
『――貴方は、何者だ?』
「……何者?」
首を傾げる。辺りを見渡したところで、こんな暗さでは相手の姿など見えない事に気づき、俺は問い返した。
「……あんたは……?」
『――存在。この空間に存在するもの』
単調で、無機質。何の感情も込もっていないような声が、言った。
『――この空間そのもの。空間の主とでも呼ぶべきか』
「……ここは、一体……」
『――ここは、とある空間。貴方が今いる所。主のいる場所。ここは主と貴方の居場所だ』
わけが分からない――それ以前に、俺の脳は何だかぼんやりとしていて、思うように働いてはくれなかった。
『――時間だ。時間はやって来る。ゲームにもお開きの時間が来る。だが終わらない。これは終わりではない。貴方は――』
俺の周りの空気が、すっと冷たくなった。
『――次のゲームが楽しみだ。“くじら”――』
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