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「あー!お前!簡単に物返すなっつーの!」
「いーじゃん、いーじゃん。教えてくれるって言ったんだよ?!」
「あのなぁ、お前は簡単に人を信じすぎなんだって!」
「ええー!それのどこがいけないのぉ?!」
二人のキャッチボールに入れずただただ見守るコレト。勇気を出して言葉を口にする。
「あ、あのぉ……」
「「ん??」」
二人が同時に振り向く。
「と、とりあえず、君たちの名前は……」
コレトは恐る恐る二人の名前をたずねる。
この世界では名前の無い人物、知らない人物には近づくなと、それはそれは丁寧かつこっぴどく教育される。彼もその洗礼を受けた民衆の一人だった。しかし、この時不思議と彼らが怖いとは思わなかった。
二人は顔を見合わせ、それもそうだと自己紹介を始めた。
「ウチは『ハリ』!特技は盗みと機械いじり!よろしくね!」
キューティクルが消えたボサボサのポニーテール。引き締まった体にあったタンクトップ。包帯でグルグル巻きにされたお手製のランニングシューズ。そしてコレトの財布を盗んだ張本人。それが彼女、『ハリ』だ。
「俺は『ウミ』。ハリとは結構前からここで一緒に暮らしてる。まぁよろしくってことで。んで、お前はなんてーの?」
ボロボロのしなったパーカー。使い込んだナンバー付きのグローブ。ハリより勝るポケット付きのカーゴパンツ。エロかぶりがトレードマークの三白眼。それが彼、『ウミ』だ。
ウミから名前を聞かれるコレト。眼鏡をかけ直すと、彼もまた自己紹介を始めた。
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