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「ね、ねぇ、何で苗字があるってだけで外の人間って決めつけるんだい?」
「この街ではね、名前が一番高級品なの!なんでかっていうと、それがあれば外の世界に行けるから、なんだよね」
「で、でも君たちには『ハリ』と『ウミ』って名前があるだろ?」
コレトは切り返す。そしてその質問にはすぐそばにいるウミが答えた。
「あー。これは本当の名前じゃないんだ。なんつーか番号っていうか、記号みたいなもんか。だってお互い呼び合うのには必要だろ?」
「しかもね、コレトとみたいに苗字まである奴はもう特上品!少なからずまともな街に住めるからね!」とハリも続けて話す。
「それとね、ここモスキートでは一軒だけ不動産屋があるんだけどさ、売っているのは土地とか物件とかじゃないんだ。コレト、もうわかるよね?」
「も、もしかして『名前』かい?」
コレトがそろりと答える。
「ご名答!」
ハリがパチンと指を鳴らす。
「扱っているのは『名前』さ!それだけ『名前』ってのは価値がある代物なんだよ。モスキートの連中はみんなこぞって『名前』を欲しがってる。要するに外の世界に出るためのパスポートだから」
楽しそうに語るハリはコレトの寝ているソファーに腰を掛け、ずいッとコレトに近づいた。
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