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もう一つは古代遺跡の財宝の一部がコレトの街に持ち帰られたことだった。ダストボックスは街として存在しているものの、人がいない以上、それは名だけの街に過ぎない。
その為、遺跡の財宝が発見されたと発表されるやいなや、周囲の街々はダストボックスを自分の街の一部だと主張し始めたのだ。
公式に所有権はどこが持つのか、何度も腹を割って協議をしたが、いつも最後は決まって紛議難航。繰り返される話し合いに意味は持たない。一向に問題解決の文字は見当たらなかった。
ではどうする、皆頭を抱えた。
そこでひょんと出てきたとある街の代表がこんな事を言い出した。
『話したところで埒が明かない、ならば早い者勝ちだ』と。
するとどうだろう。いきなり南京錠が外れたかのように街々の代表者達はこぞって調査隊と称して人を向かわせたのだ。
どこの街も『発展のため』だとか『歴史的文化財を保護するため』だなんだのと建前上理由を表向きに飾り付けいるが、結局の所、財宝目当てだ。
特にコレトの入隊した調査隊長は、密に代表者と発見した分け前の四割貰う契約を交わしていた。隊長は低コスト・高リターンを求め、研究の一環として街の大学生を集めた。隊長自身、大学教授でもあったためだろう。
コレトは調査隊に大学研究生の一人として、本当の目的も知らされないまま一員として迎えられた。
だが順調に目的地まで進んでいたはずの矢先、突如発生した砂嵐に襲われ、隊からはぐれてしまった。
暴威を振るう砂嵐に視界は遮られ、遂にコレトは気を失い、目覚めた時にはもうこの街にいたという訳だ。不幸中の幸い、彼のバックパックは盗まれていなかった。財布も無事。
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