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そして現在。行き着いたのがここ、MOSQUITOという街である。放浪者コレトは腹を空かせ、トボトボ中心街を彷徨っていた。
「おなか減ったなぁ……」
グルルルル……。
自分の不甲斐ないおなかの音にさらに気を落とす。
「何でいつも僕は……。ハァ……」
下を向いて溜め息を吐くと、偶然目の前の歩行者が。とっさによける間もなくぶつかってしまう。
「わ。あ。ごめんなさい!」
ずれた眼鏡をよろけながらかけ直すと、目の前には自分よりも身長が高い男女が立っていた。逆光で顔がよく見えなかったが、体格からして二十歳ぐらいの若者だ。
また一つお辞儀をし、このまま進もうと前に足を出した時、地面に捨てられている空き缶に気付かず、バランスを崩してしまう。
「んあっ……!」
その瞬間、誰かに右腕を掴まれた。お陰で転ばずに済む。
「大丈夫?お兄さん?」
声の主はさっきコレトがぶつかった男女のうちの一人だった。振り返るとそこには女性が。
「あ、ありがとうございます」
コレトが照れくさそうにお礼を言うと、気にしないでと明るい笑顔で返す女性。男性の方も気を付けろよとニカっと笑い、別れ挨拶の意味で手を振り、二人は去っていった。
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