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(いい人もいるもんだなぁ……)
ガラ悪い連中が多いこの街で、あんな人もいるのだと感動するコレト。が、それも束の間。自分の財布がないことに気付く。
「あ、あれ?!僕の財布がない!?」
たちまちサァーっと青ざめる。
「あの時盗られたんだ!!」
そう、あの男女二人組にすれ違った時である。良い人だと思っていただけあってショックは大きかった。足が余計重くなり、よろよろと歩くコレト。空腹も限界で、完全に疲れ果てていた。
ふと顔を上げると、居酒屋のような看板が目に入った。
『リュウのイブクロ』とドでかく書かれた看板だ。古いトタン屋根が今にも崩れそうな風貌を醸し出している。
しかしながら、中は昼間とは思えないほどにぎわっており、客の笑い声や話し声で活気溢れる感じの良い店だ。二本の煙突から漂う白煙と香ばしい香りから食べ物があることは確かだ。コレトは自分に所持金がないとわかっていても、その店に足を向ける。
理性では止めらない食欲が彼を動かしていたのだ。
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