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それから俺達は森の中で野宿......と言っても、バラキでテントやら寝袋やらは買ってきたし、何故か魔物やら危ない魔獣の類いは寄って来なかったので、かなり快適に過ごせた。
翌日も同じ景色を眺めながら前へ進む。
正直、景色が変わらないとどれだけ歩いたのかも分からないが、多分結構歩いてる。
強行遠足.......そんな言葉をいつ、どこで聞いた、あるいは見たのか分からないが、頭に浮かんだ。
野ウサギや鳥を捕まえて解体するのも慣れるしかない。
勿論、必要最低限の獲物を狩る。
大自然での弱肉強食は当然の摂理だが、はたして人間はこの自然の一部であると胸を張って言えるのだろうか?
俺が生きてきた世界では、人間は自然をことごとく破壊して来た。
この大森林の魔物や動物たちのように、自分が生きる為、食べる為だけに他の命を奪っているわけじゃない。
確かに魔物や動物たちにも縄張りを守るための戦いはある。
ただ、この木々をなぎ倒し、領土を広げたりはしない。
無駄に血を流させるのは魔獣だ。
しかも中途半端に知恵が働く奴は最悪だ。
奴らは殺す事が目的だから。
「あれ?俺どうしてこんな事を考えていたんだ?」
「ミスト様、何か?」
心配そうに見上げるサクラの頭を撫でる。
「いや、何でもない」
森の中で時折耳にする音楽のような優しい音は、ドライアドの息遣い。
汗ばんだ頬をくすぐる風は、精霊シルフィのいたずらか。
自然に溶け込んだかな。
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