子どもが泣きじゃくります。あの子がいなくなったので。

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 女性は目を丸くしている。犬歯が下あごに触れる感触があった。気分が悪いわ! 僕は、ドアに体当たりをした。ドアの隙間が開いた。  そして、鼻面で勢い良くドアが閉められた。 「あー、お父さん、また鍵かけ忘れてる。全く、だらしない」 「キャウーン。キャン」    ドアに擦れた鼻が痛い! 「戻ってきたら、鍵しっかりかけて、もらおう。一緒にお風呂入るよ」 「ワン? ワォン、ワァン?」  ちなみにチョコの風呂は、夜。最後に僕が入れる。その後、湯船と風呂場の掃除は、夏暑いので全裸でしている。  背中から抱えられ、風呂場へ向う。視線の位置が人間に近い。女性が、湯船のふたを開けていた。むーんと、残り湯特有の匂いが鼻につく。さあ、一緒に入ろう。 「ワン! ワンワン」  いきなり、僕は湯船に足から浸かった。半ば落されたようにだ。前脚(まえあし)で、湯船の(ふち)をしっかり肉球と爪を駆使して掴む。早く脱ぎたまえ。 「キャンキャンキャン」 「お湯かけるね」
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