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楓は腕時計に視線を落す。僕も枕元のスマホを手にした。時間を見れば、楓が車で、莉子を乗せて、出発する時間が近づいている。
保育園で莉子を、先生にお願いして、楓がそのまま、会社に出勤だ。
「チョコは戻ってくるから心配ないよ。それにもう六歳なら、あの子でなくて“チョコ”という名前があるんだかよ“チョコ”と呼ばないと、可哀想だよ」
「お父さん。そこまで言うなら、莉子によく分かるように教えて上げてよ」
ベッドから降りた僕は、ステテコにTシャツのいでたちで立ち上がる。リビングに向えば、目を赤く腫らしながら、莉子が立ち尽くしていた。
「莉子おはよう」
「うわあああん、あの子いなくなっちゃったよー、あの子がいなくなったよー」
大粒の涙が莉子の頬を伝わる。手近にあったティッシュボックスから、僕はティッシュペーパーを手にする。涙を拭いていた。両膝に手を置いて、莉子と目線を合わせる。
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