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「あの子じゃなくて、“チョコ”っていう名前があるから、“チョコ”って呼ぼうね」
「うわあああん、お父さんが怒ってるよー」
楓に助けを求めて、顔を巡らす。だから言ったでしょうと、まなじりが軽く吊り上がった目は冷たい。
楓は莉子の両肩に手を沿えていた。
「あの子がいなくなったけど、お父さんが探してくれるって。もう心配ないよ」
「そうなんだ!」
莉子の顔がパッと明るくなる。僕は今がご機嫌を治すチャンスと、首を縦に振り続けた。
「そうそうそう、お父さんがチョコ探してくるから、心配ないの。お母さんと一緒に保育園に行こうね」
「チョコ、そこから出て行ったと思う」
莉子の指差す先には、リビングの小さなドアがあった。チョコを買うことになり、散歩で外に出るとき用に、僕がホームセンターで材料を買って作ったのだ。
妻の楓からは、家の壁に穴が空くと反対された。子犬だったチョコが家にやってきても完成してなかった。結局、近所の工務店にお願いして、ドアを完成させた。
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