11人が本棚に入れています
本棚に追加
莉子はジッパーを上げる僕を、思いっきり指差すが、唇の端をあげていた。どうも、娘の教育については、母親の影響力が大きいようだ。
「莉子、大きな声出さないでね。ご近所に聞こえたら、みっともないから」
「みっともないって、ナニ?」
あとは任せた。いってらっしゃい、と、発進する車に両手を振りながら、見送っていた。曲がり角で一時停止するが、運転席の楓左側に体を寄せながら、入念に警戒している。シートベルトを、し忘れてないか? 車は右折して見えなくなった。
「チョコー! チョコー!」
灯台下暗しの可能性がある。まずは自宅及び、敷地から探すことにした。自宅の庭や壁沿いを歩くが、チョコはいない。屋内に入り、ひと部屋づつ、チョコと叫びながら、調べて行く。
鈴のついた散歩用のリードを手にして揺らす。チリンと音がする。近くにいたら、大喜びで走ってくるはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!