子どもが泣きじゃくります。あの子がいなくなったので。

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 長い時間、暗がりで眠っていたような気分だ。僕は穴に落ちたのだろうか? 見上げれば、作業服の男性が白い歯を覗かせている。 「今助けて上げるから」 「ワゥン?」  声がヘンだ。男性に抱っこされ、やっと路上に出た。見知らぬ二十歳くらいの美人女性に抱っこされる。 「ケガなかった?」 「ワン?」  分からないと言いたかったが、ワンとなってしまう。両腕を持ち上げられ、女性に、じろじろ見られる。バランスが取れず、両足をバタバタ動かしてしまう。 「ケガないみたい。勝手に家を抜け出したら、()けないんだよ」 「クゥーン、ワァーン」  僕の首に輪がついており、赤いヒモが固定された。女性が引っ張ろうとするので、両手と両足で抵抗していた。何かがおかしい。いや、確実にヘンだ。  どうやら、僕は犬になってしまったようだ。夢ならリアルすぎるが、面白そうでもある。  両腕ならぬ、両脚(りょうあし)は、自然と水をかくようになる。うれしいので、尻尾が無意識に振れてしまう。女性のふくらはぎを見つめながら、スピードを合わせついて行く。 「素直でいい子だ」 「ワン! ワン! キャ、ワン?」
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