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見慣れた景色だ。自宅と瓜二つじゃないか! 寝床で横になりながら、様子見だ。女性は手をしっかり洗ってから、台所で料理を始めた。美味しそうな香りが、鼻をくすぐる。どうやら、女性はフライパンで、肉を焼いた料理を作っているようだ。後ろ姿は、楓にそっくりだ。
忍び足で近寄り、椅子の下で丸くなって隠れてた。テーブルに複数の皿を置く音が響く。四個だ。フライパンから、ターナーで皿に料理が落されてゆく。聴覚も鋭くなっていた。
椅子の上に飛び上がり、必死の思いで前脚をテーブルにつく。ひょいっと頭を上げた。それぞれの皿にメモがあった。目を凝らして文字に目を通す。
〈父の分〉〈お母さんの分〉〈私の分〉〈妹の分〉だ。
「はい、寝床に戻るぅー!」
女性が寝床を指差すので、走って戻った。ごろりとしていれば、女性が近づいてきた。焼いた肉を指で摘んで、僕の口に運ぶ。
人間としてのプライドはまだある。ぐっと口を閉じる。
「ウ~、ウー」
「あら、怒ちゃった?」
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