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「今日、7時から宴会お願いしてる者です」。
居酒屋の入り口で、俺は予約を確認した。
「ありがとうございます。幹事さんでいらっしゃいますか?
お部屋はこの先の、一番奥の部屋になっております。
それでは、よろしくお願いいたします」。
「あ、ども…」
この店は奥に長い。
受付用のテーブルにスタンバイすると、俺はネクタイを少し緩めた。
壁の時計を見ると6時30分。いいくらいの時間だ。
「亮太くん、ゴメ~ン。遅くなって」。
主に女性側の幹事をやってくれた仲間が入ってきた。
「大丈夫ですよ。俺も今、来たとこです」。
「えっと…、私は会場で案内するね。これ、私のほうで把握してるメンバー。じゃあ後で」。
渡された、出席者の名前が書かれたメモにさっと目を通す。
そこに、気になっていた人の名前を見つけて、気持ちが高揚する。
…今日は逢える。
また人が入ってきた。
「おっ、亮太。今日はありがとな、何人来てくれるんだ?」
「吉野さん、早いっすね。一応予約は12人です。
でも、途中から来れそうな人もいるから、増えると思いますよ」
「亮太くん、久しぶり~。何か大人になったねえ。今日はホントにありがと」。
「二人でいなくなるなんで、寂しいですね。単身赴任じゃないんですか?」。
「まあ、転勤って言っても、3時間もあれば帰って来れるから。
でも最近はこのメンツで集まる機会も少ないからな。
今夜は楽しみだよ、じゃ、待ってるからな」。
…今日は、この夫婦の送別会なのだ。ただ、集まる仲間は、会社の同僚でも同級生でもない。
10年前、とあるイベントの実行委員会をやったメンバーだ。
準備期間2ヶ月半だったにもかかわらず、終わったあともたびたび集まって飲んでいたし、ホントに気の会うメンバーだった。
でもそのうち、一人、二人と結婚し、子どもができたりして、夜の飲み会を企画する人がいなくなった。
吉野さん夫婦はそのメンバー内で結婚したカップルで、実行委員会が動いていたときから付き合い始め、3年後に結婚。
結婚式こそ呼ばれなかったが、2次会はその時のメンバーで仕切って、大盛り上がりだった。
そんな懐かしい思い出に浸っていると、次々に参加者がやってきた。
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