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✙ プロローグ ✙
僕が生まれたのは雨の夜だった。
びちゃびちゃ雨音がして母さんが、嫌な雨だねぇーと言った。
屋根なんかロクにない。
どこだろう?
溺れそうに雨樋から、雨の塊が注ぐ。
覚えているのは僕の他にも、兄弟が居た事。
皆で母さんに、くっついてたのを覚えてる。
その頃、僕はまだ目が開いてなかった。
僕は末っ子だった。
兄妹は6つは居たと思う。
気付いたら、母さんが公園へ僕を連れて散歩に出た。
その時、僕は母さんとはぐれた。
正確には、僕を入れた兄さんと姉さん。
下の末っ子組だ。
##
どうしょう。
兄さんが母さんを探しに行き、兄さんまで分らなくなった。
僕は公園で姉さんと身を寄せ合っていた。
その時だ。僕は地上にお月様が落ちたと思ったんだ。
大きな光が夜の闇を切り裂く。
後ろで姉さんが呼ぶ、僕は止まらない。
##
だってね、母さんに聞いてたから。
『月夜の満月の夜に、願い事がかなうんだよ。』
『満月って何?』
『大きな大きなお月様』
そう言って母さんは屋根から、月を見た。
僕は見え始めた目をこすり、月を見た。
『あれは三日月。満月はもっともっと光が大きくなるんだ』
##
だから僕は地上の落ちた月へ向け、走った。
その時、大きな音がした。
キキキキーーー。
後で僕は車に突っ込んだことが分かった。
でも僕は生きてた。
助けてくれた女の子が居たから。
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