<24・ラブ・アンド・ピース>

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『あーもう、だから!ゲームの中だと運営さんに止められちゃうからできないでしょ、その……恋人同士でやるような、すごいこと!!気に止むならいつか、その、お清めナントカもして欲しいって言ってるわけ!!』  今でも、あの時の柚希のとんでもないセリフが、頭の中でぐるぐるして止まらないのである。あの無邪気で、天真爛漫な柚希が。しれっととんでもないことを考えていて、拓海に望んでいたというのだ。――あの後、ゲームの世界だったというのに、鼻血を吹いて拓海はブッ倒れてしまったのだった。本当にもう、呆れられても仕方ないというものである。  なんという根性なしか。同時に。根性がないくせに、欲望だけは際限なく膨らむのだからどうしようもない。 ――十八歳になったらとか言われたけど……俺ほんとに、十八歳になるまで待てるんかなあ……!?  残念ながら、道のりはあまりにも長すぎる。それより前に一線を超えてしまわない自信がない。  あるいは柚希は、それさえもひっそりと期待して、誘惑してきているのだろうか? 「拓海、ぼーっとしてちゃ駄目だよ!」 「あ」  いつの間にか、町の端まで来ている。パープルの森の手前で、ダウジングマシーンを構えて柚希が告げた。 「一応カップルイベントで、カップルの絆を試すイベントってことになってるんだから。……報酬も欲しいけど、他のリア充どもに勝ちたいとは思わないの?」  ねえ、と。可愛くて、天使と悪魔の両方の顔を持つ親友兼恋人は告げるのだ。 「それとも……拓海の、俺に対する気持ちってその程度なの?マジで好きでたまんないの、俺の方だけ?」 「ま、まさか!んなわけあるか!」  わいわい騒いでいれば、おのずと周囲の注目は集まる。なんだなんだと他のプレイヤー達がこちらに視線を向けるのを感じながらも、拓海は思い切り柚希の腕を掴んでいた。  こうなれば、やぶれかぶれ、どうにでもなれだ。  他の恋人達よりもずっと自分たちは愛し合っているし――これからもずっと、幸せを紡いでいくのだということを、ここで証明してやってもいいではないか。 「お前が好きだ!めっちゃ好きだ!他の奴らなんかに絶対負けないくらい、大っ好き、だああああああああ!」  見せつけるように、思い切り柚希の腕を引いていた。  強引に奪った唇の味は、あまりにも熱に浮かされすぎていてよく覚えていない。  確かなのはこの約十分後。嫉妬した他のプレイヤーたちに散々な妨害をされまくり、拓海が満身創痍になったという事実だけである。
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