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染殿先輩が生徒会室を出て行くのを見送っていると、ふと視線を感じて、私は振り返った。花江先輩が、ぱっちりとした二重の瞳でじっとこちらを見つめている。色白の顔をふわふわとした栗色の髪が彩り、血色のいい小さな唇と相まって、まるで女の子の西洋人形のようだ。
(花江先輩って、すごく美人よね)
文武両道な上に才色兼備なのだから、向かうところ敵なしといった風情だ。
「あなたは1年生の源さん、ね」
思いがけず名前を知られていたことに驚き、私は慌てて「はい」と答えた。
「あなたは何の申請に来たの?」
「火の使用の申請を……」
「ふぅん。理由は?」
「クラスの出し物で和風喫茶をすることになっていまして、調理の為にカセットコンロを使いたいんです」
そう説明をすると、花江先輩はしばらくの間考えた後、
「許可は出来ません」
と言った。
「ええっ!そんな!」
思わず不満の声を上げたが、
「教室内でカセットコンロを使うのは危険です。火を使わないメニューにしてちょうだい」
と断られてしまう。
「どうしてもダメですか?」
このままだとクラスメイト達をがっかりさせてしまうと思い、食らいついてみたが、
「ダメです」
無碍なく却下されてしまった。
「……わかりました」
肩を落とし、生徒会室を後にする。
(メイド喫茶をする他のクラスは許可が下りたって聞いたんだけどな……)
なぜうちのクラスだけダメだと言われてしまったのだろうと考えながら、私はとぼとぼと教室へ戻った。
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