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怒り心頭のまま、職員室にやってきた私は、まるで道場破りのように勢いよく扉を開けると、手近にいた飯森先生に声を掛けた。
「先生!被服室の鍵を借りた人、知っていますか!?」
飛び掛からんばかりの私の剣幕に飯森先生は吃驚した顔をしたが、私の後ろにいる七瀬先輩に気づくと、
「それならさっき、そこの七瀬が借りて行ったが……」
と指を差した。
「違いますよ!七瀬先輩の前です!」
勘の鈍い飯森先生にイライラしながら噛みつく。すると、
「貸出帳を見ろよ。借り出した者は名前を書く決まりになっているんだから」
と鍵ボックスの隣を顎でしゃくった。
私は鍵ボックスに駆け寄ると、隣にぶら下げられているノートを手に取った。パラパラとめくり、今日の日付を探す。私の手元を覗き込んでいた七瀬先輩が、
「あ、ここだよ、美緒ちゃん」
先に見つけ出し、差し示した。七瀬先輩の名前の前には、家庭科の栄(さかえ)先生の名前が書いてある。しかも時間は3時間目が始まる直前。ということは、この後はまさに授業中だ。そして授業が終わった後、鍵は速やかに返却されていた。
「さすがに、栄先生が犯人ってことはなさそうだね。ドレスは被服室の後ろに飾りっぱなしになっていたんだもの、仮に3時間目より前に切り裂かれていたとしたら、いくらなんでも授業中に誰かが気づいて騒ぐよね」
七瀬先輩が溜息をついた。
「じゃあ、犯人はいつ被服室に入って、ドレスを切り裂いたんでしょうか」
眉根を寄せた私に、七瀬先輩は、
「分からない」
と言って首を振った。
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