かぐや姫

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その噂を聞いたわたしは、ある決心をした。 かぐや姫に思いを伝えようと。 一目見た時から、貴方が好きだと。国に帰らないで、わたしの側に居て欲しいと。 その決意をした日の夜、わたしはかぐや姫の住む屋敷に入り込んだ。 西洋風建築の建物で、庭には見た事が無い植物が生えていた。 やがて、かぐや姫がいつも姿を見せる部屋の下までやってくると、二人の男の話し声が聞こえてきた。 「……彼女の病気は治らないのか」 「ええ。私どもの技術ではこれが限界です」 どうやら、かぐや姫は病気になったらしい。しかし、いつものように夕方に見た時は何ともなさそうであった。 その後、体調崩したのだろうか。 「やはり、彼女を元の世界に戻すしか、治す方法は無いのではないでしょうか」 「それは出来ぬ! 彼女が来てから……彼女がもたらせてくれた知識や技術のおかげで、我が家は繁栄した! これからも我が家に貢献して貰わねば困るのだ!」 「しかし、旦那様。彼女を失っては、元も子もありません」 「だが……」 と言葉を詰まらせる男ーーおそらく、かぐや姫の保護した屋敷の主人は、もう一人の男ーー医者だろうか。に、説得をされ続けた。 やがて、主人は、ポツリと呟いたのだった。 「……彼女を元の世界に戻すには、今夜しか咲かない特別な月下美人の花が必要だ」 「そうなのですか?」 「ああ。彼女をここに呼んだ時にも使用したものだ。普通の月下美人の花ではダメだ。我が家が所有する山に生える、満月の光を浴びて光輝く、特別な月下美人で無ければダメなのだ」 「では、使用人を行かせて、取りに行かせ……」 「いや。あの月下美人は、月明かりの下で無ければ見つからない。今日のように、月が出て無い日は見つからない」 わたしは空を見上げた。今夜の月は雲に覆われて、完全に隠れてしまっていた。 「しかし、早く見つけなければ、彼女は死んでしまいますぞ……!」 「わかっている! わかってはいるんだ……!」 わたしはかぐや姫の身を案じて、いてもたってもいられなくなった。 この屋敷が所有している山の場所は知っていたーーこの辺りでは有名な話なのだ。 わたしは取るものもとりあえず、山に向かったのだった。
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