あの子

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あの子

「ちょっと聞いてくれよー」 前に座っている奴がスマホ片手に話かけてきた。 「あの子がいなくなっちゃったんだよ!これバグかなー」 見せてきたスマホ画面はゲームのようだ。 部屋の絵で窓があってベッドがあって、コタツやら観葉植物やらが置いてある。 「なにこれ、育成ゲームかなんか?」 「そうなんだよー。もうちょっとで進化しそうだったのに、キャラいなくなってどうすんのこれー。」 「とりあえず、運営に連絡じゃね。」 確かに、育成ゲームでキャラがいなくなってはどうしようもない。 でも、今はいろんなゲームがある。 放置 というか、一定時間置かないと体力とかメダルとか増えないゲームも存在するので 俺は深く考えずに流した。 「まぁ、家出中とかならそのうち戻ってくんじゃね。」 次の日、 「ちょっ、ちょっとどうしよう。マジやべー、マジちょっと話聞いて!!」 「おい、落ち着けよ!」 前の奴が昨日とは打って変わった様子で話かけてきた。かなりテンパっているようだ。 「一体、どうしたんだよ?」 「あの子が帰ってきた!!」 「あ?昨日のゲームの話か?心配して損したわーー。」 「違う!!いや、違わないけど!!」 「どっちやねん。」 「なんか俺の部屋にいたんだよ!!」 「はぁ?」 「だーかーらー、スマホの中じゃなく俺ん家にいんのゲームキャラがっ!!」 「はぁ!!??」 前の奴は顔を覆って 「あーーー、本当マジどうしよう!マジやばいって!!」 「ちなみにどんなキャラ?」 「ニートおっさん」 「ニートおっさん!?」 「社長に進化させる途中だったんだよ!!」 「、、、頑張ってお世話すれば、社長になって出ていくんじゃないかな(笑)」 「うおおぉーーー、せめて美少女だったら」 四つん這いで項垂れる奴に俺はハンカチを差し出した。 完
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