少年勇者の旅立ち

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「わあ、何これ」 「洞窟の入り口だよ」 そう聞いて、ゼンは心おどりました。 冒険家は、例えば洞窟を探検し、そこで宝を探し出したりします。そういった洞窟は世界各地に存在し、その1つがここに現われたということです。 「それじゃあ、さっそく冒険に出発だ」 「おいおい、ちょっと待ちなさい」 おじさんの制止も聞かず、ゼンはすぐさま洞窟に入っていきました。 入ってすぐのところは薄暗く、見てみると、ほら穴のようなのがあり、それが2つに分かれていて、それぞれがずっと奥まで続いていました。 ゼンはそのまっすぐ進んでいるほうへ歩いていきました。 すぐさま、何かの気配を感じました。見てみると、前のほうで何かが動いていました。洞窟が奥のほうへ行くほど暗くなり、そのためにその正体がすぐには見極められませんでしたが、少ししてそれが何かが理解できました。 モンスターです。大きさはゼン少年と同じぐらいで、何か虫と似たような姿でした。 冒険家はモンスターをいっぱい退治して実績を上げていく。ゼンは生涯で最初に遭遇したそれに立ち向かおうと突進していきました。 すぐ側まで接近したところで、素手で殴ったり蹴ったりしました。それを繰り返しましたが、体の表面が硬いためか、手ごたえを感じませんでした。 そうしているうちに、そのモンスターの体の一部がゼンめがけて襲いかかりましたが、ゼンは気付きませんでした。 そのとき、ゼンは何か熱いものを感じました。そして気付くと、モンスターが炎に包まれていました。 「いきなり洞窟に入っていったら危ないよ」 後ろから声がしたので、振り返ると、おじさんの姿がありました。 「何の準備もしないで洞窟に入っても、中は真っ暗だし、モンスターだって突然攻撃してくるかもしれない。そいつに立ち向かうには何か武器を持たないとだめだ。私が炎の魔法を使わなかったら、君は死んでたかもしれん」 炎におおわれて少し明るくなったため、モンスターの姿を確認することができました。ヘタするとこいつに殺されたであろうと感じ、ゼンは恐ろしくなって腰を抜かしました。 「大丈夫だ。こいつは私の炎の呪文でダメージを与えて、とっくに死んでおる。それより、君、おびえているようだけど、どうする、冒険はやめるかね」 それを聞いて、ゼンはすぐ立ち上がりました。 「いや、やる」 「よろしい。それより、冒険するために、武器など色々必要なものがある。町へ戻って入手しにいこう」 2人は町に戻ってきました。 おじさんはゼンに聞きました。 「武器はどこに売ってるかわかるかい」 ゼンは答えました。 「うん、知ってるよ。だけどぼく1人では入れないよ」 「そうだな、子供だけで行ってはいけないんだな。私と一緒なら大丈夫だ」 ゼンはおじさんを、武器を売っている店に連れていきました。 「よし、ここなら何でもそろってる。行こう」 2人は店内に入りました。 「まずは武器を売ってるところだ。おお、ここだな。色んな武器が置いてある。しかし君はまだ子供だ。お母さんにも言われてるそうだが、本当はもっと大きくなってからでないと冒険をしてはいけないんだな。だから子供用の武器は置いてない。君には重くて持てないのばかりだ。まあ小さいのなら何とかなるだろ。おお、これがいい。どうかな」 おじさんは短剣を手に取り、ゼンに手渡しました。 「うん、これでいい。ありがとう」 「ところで、お金は持ってるかな」 ゼンは片手に短剣を持ちながら、もう一方の手で、服の懐やズボンのポケットなどをさぐり、何個かの硬貨を取り出しました。 「今はこれだけだけど、家にも置いてきてるよ」 「うーん、これだけでは足りないな。じゃあ、家に取りに帰ろうか」 おじさんはゼンから短剣を受け取り、元あったところに置きました。それから2人はゼンの家に行き、ゼンは中に入ってお金を取ってきて、2人でまた店に行き、さっきの武器のあったところに来ました。 「うん、これだけあれば買えるな。次は防具だ。おお、ここだ。鎧は軽いのでいい。体全体をおおってるのは重過ぎて戦闘には向いてないんだ。うーん、君に合う大きさのがないな。第一、金が足りない。盾も小さいのなら君にも持てるけど、使いこなすのが難しいんだ。だから今は武器だけで十分だ。じゃあ、今日はさっきの短剣だけにしよう」 2人はまた短剣のあったところに行きました。そしておじさんは店員を呼びました。 「この短剣を買いたい。お金はこれだ」 おじさんは少年から受け取ったお金を見せました。 「へい、毎度あり。少々お待ち下さい」お金を受け取った店員はどこかへ行き、また戻ってきました。「はい、お釣りです。ありがとうございました」 ゼンは新しく購入した短剣をながめつつおじさんと店を出ました。 「冒険に出ると何か価値のあるものが入手できるからそれと交換に新しい武器や道具などを入手していけばいいんだよ。今日はもう遅いからまた明日さっきの洞窟に行こう。家まで送っていってあげるよ」
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