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翌朝僕はいつも通り仕事に向かった。
だが、まるで何も頭には入らなかった。
あの子がいなくなった世界には、意味など無いような気がずっと心の奥に残っていた。
そんな中で、休憩中にインターネットであの子の事故について調べてみた。
きっと納得が出来ないからこそ、これが現実なのだと明確にするものが知りたかったのかもしれない。
でも、そこにあったのは予想とは全く違うものだった。
「某月某日X県の国道で、22歳の津島久瑠美さんが、道路を横断中に走ってきた大型トラックと衝突する事故があり病院に搬送されましたが亡くなりました」
あの子の名前がはっきりと書かれた記事は、僕にまざまざと現実を突きつけた。
「トラックを運転していた50代の男性によると、右側から出てきて気づいた時には間に合わなかったとのことです。現場は見通しの良い直線で、警察は事故の原因を......」
僕はこの文章を見て、震えが止まらなかった。
食いしばった歯がギリギリと音を立てていた。
何故あの子だけが名前が出ているのか?
何故運転手の名前が無いのか?
轢かれた側は被害者だ。
なのに何故、名前や年齢まで世界中に晒されなければいけないのだろう?
それに比べて、加害者は何も情報が無いに等しい。
あまりに不公平だ。
堪えがたいほど僕にはそれが何より許せなかった。
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