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「いらっしゃいませ。」と怠そうな声で言うコンビニの店員。コンビニの店員歴三年半の男性、吉田真一だ。
今日は客があまりこない。
暇なので、カウンターの煙草の補充をする。
吉田は高校を卒業してすぐに、コンビニでバイトを始めた。就職をしてもよかったが、バイトの方が何かと融通もきくし、少し稼げると思った。
他の人達からは、就職しろよとか言われたが聞かないようにしていた。
14時が過ぎた頃、そろそろ食品が来るなと思っていたとき、一人のおばあさんのお客が来店してきた。
おばあさんは醤油とジャムの瓶をもってレジに来る。
すぐに、会計を吉田がする。
おばあさんが「あの子がいなくなってね。知らない?」と聞いてくる。
吉田は「なんですか?」と一応優しく聞く。
おばあさんは「あの子がね!どこにいるのか。」と同じ言葉を繰り返す。
吉田は多分少し認知があるのかと思いほっといた。
そのままおばあさんは帰っていく。
たまに、あんな感じのお客が来るときある。その時は、話を合わせるのが対応だった。
そうしている内に、店長が発注した食品が箱で十箱届いた。
吉田が一人でやる。
バックルームに店長は居るのだが、ほとんど出てこない。
サボっているのだ。オーナーが来て怒られればいいのにと思っていた。
次の日もあのおばあさんがやって来て、昨日と同じ会話だった。
「あの子がいなくなって。」とタメ息をついていた。
吉田は段々気になり出して、おばあさんを尾行した。家は普通の一軒家で、おばあさんが入って行くと、悲鳴みたいなのが聞こえた。
吉田はすぐに、その家に行くとおばあさんが出てきて、「あの子がいたよ。」と指差す方向を見ると首から血を流した女性がいた。
吉田も声をあげた。
吉田は悪夢から覚めた。「なんだ夢か...」と寝汗びっしょりでベットの上にいた。
その日もあのおばあさんが来て嬉しそうな顔で吉田に来て「あの子達いたよ!」と手から何かを出した。
見ると蝉の脱け殻だった。
吉田は「うわー」と声をあげた。
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