二章  それはモテる人のやること

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「えっと、知り合いっていうか、近所に住んでるみたいで。今朝はたまたま、一緒になっただけだよ!」  急いで説明したけど、なんでわたし、しどろもどろなんだろう。  しかもなんか言い訳っぽい。  動揺して頭の中がぐるぐる回り始める。  そんな自分が情けなくてかーっと顔が熱くなったけど、せっかく振ってくれた話を終わらせたくなくて、わたしは急いで息継ぎした。 「新名さんも、永人くんのこと知ってるの?」 「同中だから」 「わたしもー」  住田さんが横で小さく手を上げた。 「ふたりとも? そうだったんだ!」  じゃあもしかして、二人とも家の方向が一緒なのかな。  混んでるから気づかなかったけど、いつも同じバスに乗ってたのかな。  このチャンスは逃せないとばかりにいろいろと聞こうとして、でも、絶妙なタイミングでチャイムに邪魔されてしまった。  住田さんが髪を揺らしてゆったりとその場を離れ、新名さんがサッと前を向いて。  貴重なコミュニケーションは終了。  この空振りに心がどっと疲れて、一時限目の授業を迎えることになるのだった。
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