つめたいひと

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 次の日、俺はいつものように家を出た。目は腫れぼったいし、身体も異様に疲れていたけれど、そう休むわけにも行かない。少し長すぎるマフラーを巻き直しながら、中庭に出る。二階を振り仰いでも、手を振ってくれる人はいない。隣室の窓は、それが当たり前みたいに閉まっていた。  昨夜のことを考えると、腹の底が重くて、冷たくなる感じがする。あのひとのことを全部覚えているのに、なにか忘れているようにも思う。  俺はため息を一つ吐き、学校に向かって歩きだした。  今日はやたらと風が強い。強風に煽られて、マフラーの結び目が緩んだ。ほどけたのを結び直そうとすると、バタバタ勢いよくはためく。そうして端が何かに引っかかったらしい。ぐいっと急に引っ張られる。なんだ? 視界の端に、慌てたようなだれかの顔と自転車のかご、なにかに引っ掛かってるマフラーが、パラパラ漫画みたいに見えた。 「!?」  考える間もなくパラパラ漫画は続いて、車輪とか車道とかが交互に見えて───そこまでだった。  ああ、俺、死んだんだな。  なんかあっけなく世界は暗転した。
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